今週のコラムニスト:マイケル・プロンコ [1月2・9日号掲載] 木曜の朝に新宿駅のホームで過ごす時間は、私にとって東京暮らしの醍醐味の1つだ。私はホームから巨大な工事現場を眺める。普通の通勤客を装っているが、実は工事を見るため早めに駅に行く。ホームから工事現場を見下ろすと、東京が生き物のように感じられるのだ。 工事現場では作業が絶え間なく続く。都市という生き物の細胞がうごめいているかのようだ。重そうな資材が空高くつり上げられ、ゆっくりと降ろされる。巨大なダンプカーが土を運び出し、新しい資材を運び入れる。私の目の前で、新しいビルに命が吹き込まれていく。 いつも通る場所のあちこちで、こんな都市づくりの奇跡を見るのが私は好きだ。幸い、最近の工事現場は壁に囲まれていないことも多いので、簡単に見物できる。 観客が私だけということはほとんどない。他の工事現場ファンも言葉など口にせず、ただ静かに眺めてい