三世代の孤独 俺の母は、92歳で死んだ。 最後はカトリック系養護園で手厚く看護されたのは幸運だった。 それでも寝たきりの姿を見ると、長男の俺は、せつない気持ちから、『おばあちゃん、もう、ボケてもいいんだぜ、その方が楽なんだから、もう、安心して、ボケなよ。』と言った。 『いいえ! まだまだ、ボケちゃいられません! 征ちゃん! 私は90歳まではしっかり生きますからね!』と力強く宣言した。 その時、すでに、92歳だった。 俺の不行儀に生涯怯え続けた元気な88歳の母に、『おばあちゃん、今日1日、今日1日を生きられたことに感謝して、もうなんの心配もないんだから、夜は安心して寝るんだぜ。そして朝、元気に目覚めたら、ああ、今日1日も得をしたと思って、またありがたくその1日を生きることだぜ。』といかにも悟った風なことを言った。すると母は、俺の顔を不思議そうにしばらく見つめ、『征ちゃん、この歳になると、眠る