写真を撮り始めてから、ずっと不思議に思っていることがある。 道を歩いていると目の前に気になる光景が現れる。おもむろにレンズを向けてシャッターを切る。続けて角度を変えて何枚か撮る。家に帰って見比べて、迷った末に選ぶのは、だいたい最初に撮った一枚だ。 おそらく理性で選ぶ光景より、本能で感じた光景のほうが脳に焼きつきやすいのだろう。写真には見本となる構図があるが、撮影者が最初に感動した光景はセオリーを超えているのだ。 ただ、こうして写真を並べても、見る側はどれが最初に撮ったものか分からない。撮影した本人しか区別できないし、時には本人ですら、なぜそれを選ぶのか説明できない。 私はこの不思議な現象を、ファーストカット症候群と呼んでいる。 撮影カメラ FUJIFILM X100F 撮影地 岡崎市美術博物館