[図2]からもわかるように、事象Aが物語世界の中で改変(または誤認)されることはないのですから、叙述トリックは仮想の物語世界の中ではなく、送り手がそれを表現した叙述の中にのみ存在すると考えることができます。 [3] トリックの解明 [図2]に示したように、通常のトリックとは異なり、叙述トリックでは物語世界の中の事象Aが改変されることはありません。すなわち、叙述トリックは物語世界に影響を与えない、と表現することもできるでしょう(*2)。 ところがこれは、物語世界の中の登場人物は叙述トリックの存在を認識することすらできない(*3)、ということを意味します。したがって、叙述トリックが仕掛けられた物語の登場人物は、叙述トリックによって隠された真相そのもの(例えば[図2]における事象A)を直接的に示すことはできる(*4)としても、叙述トリックを解き明かす(仕掛けを説明する)ことはできない、ということ
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