<「国債金利上昇=国債価格下落によって生じるキャピタル・ロス」問題を考察する。結論からいえば、問題は何もない。それでも、国債下落金融危機論が根深いのはなぜなのか> 本稿は、「日銀債務超過論の不毛」(2017年5月8日付)の続編である。筆者はそこで、「異次元金融緩和の出口局面において、日銀の剰余金はマイナスとなり、そのバランスシートは債務超過に陥り、円の信認が毀損される」といった、いわゆる日銀債務超過論が基本的に的外れであることを指摘した。 異次元緩和からの出口において、日銀の剰余金はおそらく減少するであろうし、一時的にはマイナスとなる可能性もある。しかし、仮に日銀のバランスシートが債務超過に転じても、それは出口における過渡期の現象にすぎない。というのは、「日銀の資産から得られる収益がその負債に対して支払う付利を将来にわたり恒常的に下回る」ことはあり得ないからである。 日銀の剰余金が減少する