その子の放った3ポイントシュートは、リングをかすることなく、ストンとネットに吸い込まれた。 2本立て続け、しかも左右、両サイドからだ。 「あのね、ああいう奴はね、見えている世界が違うんだよ」 体育館すみっこ部の御意見番が腕を組み、相棒の角刈りメガネに講釈を垂れた。 見えている世界が違う? シュートを打った右手を空中に残し、ボールがネットを通過した瞬間にガッツポーズを作る。退屈な体育の授業で輝くサラサラヘアーが見ている世界は、一体どんな色をしているのだろう。 白、黒、灰色。 僕が見ている世界に、華やかな色はない。 同じように息をして、同じ人間として14年間生きてきても、僕らは圧倒的に違う。 まるで誰かに仕分けされたように、根本から存在として異なっているのだ。 *** 夜中の2時に体育館に忍び込むようになったのは、眠れない日が続いたのと、色のついた世界を覗いてみたい衝動に駆られたからだ。 昼休