音楽家がタダで消費される時代 ──音楽、文筆業、講師と、3つの領域を股に掛けた活動を続けられています。それぞれの領域で、今最も力を入れていることをお聞かせください。 菊地 えーと、まず音楽からいくと、昨年末に21世紀の最初の10年間の活動をまとめた『闘争のエチカ』(上・下巻)という全集を出しました。 音楽を聴く際の主要なツールは、1980年代以降ずっとCDだったわけですが、ご存知のように、今CDが売れなくなっていて、何か工夫をしなければならないという問題に業界全体が直面しています。僕の全集も最初はよくあるCD10枚組とか15枚組のボックスセットにしようと思ったのですが、結局それはやめました。やめて、USBメモリーに4Gバイト分の情報を入れて、それを上下巻で出す、という形式にしました。楽曲だけではなく、動画とテキストも入れて、2本買えば僕の10年分の仕事の全貌が分かるというつくりになっていま