子どものころ、友達と殴り合いのケンカをしていたら、先生や親に「やめなさい!」とひどく叱られた、そんな思い出のある方も多いかと思います。「ひとに暴力を振るうのは良くないこと」。わたしたちは幼い頃からそう言い聞かされて育ってきました。大人になって街を見渡しますと、たとえば役所や警察署などに「暴力追放の街宣言」などの垂れ幕が下がっているのを目にします。そしてわたしたちは再び確認するのです。ああ、やっぱり暴力って、なくすべきものなんだよね、と。 けれど、少しばかり視線を移しますと暴力の影がいたるところで見られます。金を脅し取ろうとする強盗と、それを力づくで抑えようとする警官。政府を転覆させようと息巻く民衆と、それを鎮圧しようと銃を向ける軍隊――。 世界には暴力が満ちあふれています。そしてそれを眺める私たちは、「暴力ハイケナイ」と言いながら、しかし「良い暴力」と「悪い暴力」とを分けています。けれど、