「ナショナリズムの超克」−姜先生によればこのテーマこそ石橋湛山が最後に残したメッセージだという。戦前からの小国主義の立場、特に政界の第一線を引退してから強まった脱冷戦的な発想を引き継ぐ石橋の思想であり、今日的な意義がある、我々が立ち向かわなければならない問題だ。この石橋湛山の生涯とその業績の全体像を明晰な文体と分析でまとめあげたこの著作は、いまの日本社会に石橋が残したものを再検討する素材を十分に提供したものである。 本書ではいままでの著者の石橋湛山研究の成果がふんだんに盛り込まれている。僕も姜先生の著作のほとんどを読んできたので、この一般にも読みやすい石橋の伝記は、いろんな意味で喜ばしい。特に今日でいうデフレ脱却論争ー金本位解禁論争と言われるものーに至るまでの湛山の思想形成とその内容が、僕にはとても参考になった。 1 湛山の思想形成には日蓮宗的な宗教教義よりも、その初期には「血気の多い素朴