井伏鱒二井伏鱒二が恋心をつづった書簡の一部=東京都目黒区駒場の日本近代文学館 「お露(つゆ)に逢(あ)ひ度(た)し、逢ひたき心、切なるものに候(そうろう)」。作家の井伏鱒二(1898〜1993)が26歳のとき、高等女学校の生徒に恋する思いを率直に告白した親友あての書簡が見つかった。彼女が苦手なネズミと代数をこの世から永遠になくすべし、とつづるなど、若き日の文豪の純真な姿が鮮やかによみがえる。 井伏は1922年に早稲田大を退学。24年4月ごろから1カ月ほど、柳井高等女学校の教師だった親友の田熊文助を頼って山口県柳井市に滞在し、紹介された3年生(現在の中3)のお露を恋した。 田熊あての書簡14通のうち24〜25年のものは12通。田熊の孫が保管し、昨春、東京の日本近代文学館に寄贈した。東郷克美・早稲田大名誉教授(日本近代文学)が調査し、「日本近代文学館年誌 資料探索6」に今月発表した。