1 宮本正尊と百間町栄恩寺 百間町栄恩寺は、慶長11年(1606)に創立した真宗大谷派の寺であり、宮本正尊は、第14代の父実成と母政子の長男として明治26年(1893)10月1日に生まれた。父実成は、東洋大学(当時の哲学館大学)出身の兄影幽が病死したため、陸軍教導団を出て軍職にあったのを退き、東洋大学長井上円了の書生をしながら卒業した。母政子は、「川越の名号」で有名な親鸞聖人旧跡柿崎町(現上越市柿崎区)浄福寺から嫁いだ人である。 正尊は、幼少時からこの母のあとについて法話を聞いて育ち、浄福寺で役僧が参拝者に「川越の名号」の縁起について話すのを度々聞かされてきたことから、仏教に対する素地はこの頃からあったといえよう。 百間町といえば、忘れてならない人物に山田辰治(愛山)がいる。地元の大地主であった愛山は、奨学資金規定を設け育英事業に熱心であり、この恩典を受けた俊才は200人以上にも及び、正尊