なぜパワハラやカスハラはなくならないのか。『日本語に生まれること、フランス語を生きること』の著者である上智大学名誉教授の水林章さんは「パワー・ハラスメントの根本に何があるのかと考えたら、それはやはり日本語ではないか」と指摘する。どういうことか。ノンフィクションライターの山田清機さんが聞いた――。(後編/全2回) 「日本語」が日本社会の構造的な特徴を支えている さて、ここまでの議論に登場した、天皇を頂点とする「垂直的な階層構造」や、上位者に価値が集中する「権力の偏重」、そして被抑圧者が抑圧者に豹変する「抑圧移譲」といった現象は、われわれが常日頃漠然と感じていることと、大きく相違するものではないだろう。多くの人が、「そう言われればそうだな」という感想を持つのではないだろうか。 ところが、『日本語に生まれること、フランス語を生きること』には、まさに目からウロコが落ちるような斬新で、衝撃的な指摘が