読書感想文6つ目。安易な表現をすれば、非常に考えさせられる本だった。 国家の論理と企業の論理—時代認識と未来構想を求めて (中公新書) (新書) 5つの論文が収録されており、最初の論文のタイトルが本のタイトルになっている。そのため、企業の論理はそこだけで、大半は国家と個人という視点からの論考である。アメリカ、中国に対して日本はどういう戦略を取るべきかという著者の私論も興味深いものだったが、近頃の自分の関心事と関連する部分、今後について考える上で関係しそうな部分について取り上げてみる。 ある財界人が、参加した座会のなかで「君、これからは日本を超えた発想をしなければだめだよ」と発言していた。この種の議論を「もっともらしい空論」という。確信をもって言うが、世界は正体不明の故郷喪失のコスモポリタンを信頼しない。日本人としてのアイデンティティと基軸にこだわりながら、世界に一定の敬意をもって受け止めら