近年,世界中で喘息患者が増加しているといわれており,日本もその例外ではなく,喘息児童数は過去10年間に2倍に増加したといわれている。このような喘息増加の詳しい原因は明らかではない。しかし,一般的に大気環境が非常に重要な要因になっていることは衆目の認めるところである。 大都市部における今日の主要な大気汚染物質は自動車に由来する二酸化窒素(NO2)と粒子状物質(SPM)といわれている。図1に,我々の研究チームの田村らが東京都内の80地点で測定したNO2とSPMの間の相関を示した。両者間の相関は極めて高く,NO2汚染が高い地域はSPM汚染も高いことを示している。また,このSPMの中でも,特にディーゼル車の排出する排気ガスあるいは排気微粒子(DEP)がその主たる部分を占めている。これら大気汚染物質のうち,NO2はこれまでに膨大な研究報告があるにもかかわらず,喘息の原因になりうることを示したものはな