農業交渉は、国際経済の一体化に不可欠な交渉プロセスです。とかく例外のありがちな農業分野の貿易を「本来原則」に回帰させるこのプロセスは、各国の農業の構造調整、ひいては政治経済調整を伴います。一連のプロセスの背後には常に「アメリカ」という主役がいました。 戦後の国際農業交渉は、(1)米国を基軸としたGATT・WTOラウンド交渉と、(2)対米関係を軸とした日米二国間交渉との二本立てで行われてきましたが、1990年代に入ると後者はGATTラウンド交渉に吸収されます。先進国間交渉だった農業交渉が、(3)ドーハ開発ラウンドでは先進国・途上国間交渉としての展開を見るようになります。 プロセスの背後にあった国際政治経済要因を簡単にみると、東西対立・冷戦構造のなかで、西側の経済連携としてGATT(貿易と関税に関する一般協定)が1948年に締結され、80年代まで続きます。しかし、冷戦構造の氷解以降、米国を中心