蜘蛛と、銀色のなめくじとそれから顔を洗ったことのない狸とはみんな立派な選手でした。 けれども一体何の選手だったのか私はよく知りません。 山猫(やまねこ)が申しましたが三人はそれはそれは実に本気の競争をしていたのだそうです。 一体何の競争をしていたのか、私は三人がならんでかける所も見ませんし学校の試験で一番二番三番ときめられたことも聞きません。 一体何の競争をしていたのでしょう、蜘蛛は手も足も赤くて長く、胸には「ナンペ」と書いた蜘蛛文字のマークをつけていましたしなめくじはいつも銀いろのゴムの靴(くつ)をはいていました。又(また)狸は少しこわれてはいましたが運動シャッポをかぶっていました。 けれどもとにかく三人とも死にました。 蜘蛛は蜘蛛暦(くもれき)三千八百年の五月に没(な)くなり銀色のなめくじがその次の年、狸が又その次の年死にました。三人の伝記をすこしよく調べて見ましょう。 一、赤い手長の