本音を言えない「終わった人」たち 小説「終わった人」が多くの人に読まれ、映画化が進み、メディアで取りあげられ、こんなにも話題になるとは考えてもいなかった。 ただ私は、定年を迎えたり雇用延長を終えた人たちが、心の中では「もっと仕事がしたい」「俺の能力をもっと生かしたい」と思っていながら、それを口に出しにくいことを、20年ほど前から感じていた。 定年にせよ雇用延長終了にせよ、それはたいてい60代で訪れる。60代は非常に若い。仕事をする体力も頭脳もまだ十分にある。その上、長年の経験は若い人にはない能力だ。もっと仕事がしたいと思うのは当然の本音なのに、社会は年齢でピシャリと切る。 「終わった人」の多くは、そんな本音を口にしない。口にすれば、「ワーカホリック」だの「貧乏性」だの、「他に楽しみがないのか」などと言われる。家族に至っては、正面から言い放つ。 「だから若いうちから趣味を持てと言ったのに。今