「法華経」は,だれによって,なぜ,どのようにして書かれたのか。「諜報謀略論」の視点からこの問いに答える試みは本邦初と思う。諜報謀略論は新たな発見や異質な発想をもたらし,奇想天外,意外なことがらを浮き彫りにする。そこから,人の心を揺さぶるインテリジェンスの粋を感じていただきたい。 分裂したグループが法華経を創作した そもそも啓示宗教であるユダヤ・キリスト教では,経典テキストを確定するために並々ならぬ努力がなされてきた。そして確定された経典テキストに対する解釈の違いが公会議で議論され,正統・異端を生んできた。 だが仏教では,仏陀入滅後,経典テキストを確定するために「結集」(数百人の僧が集まって経典の内容を議論する会議)が数回開かれたが,その後はかなり自由に経典テキストが創作された。経典テキストの創作が自由ならば解釈も自由。だから,ユダヤ・キリスト教の言説に起こったような正統・異端の議論をそのま