後継者がいない(上) 東京商工リサーチによると、後継者難などで毎年3万件の企業が休業や廃業、解散している。技術やノウハウが失われかねない事態にどう対応すべきか。 JR大宮駅から北へ約10キロ。埼玉県伊奈町の事業所や工場が集まる一角に、円戸(えんど)幸雄(82)が1989年に創業した三協技研がある。複数の素材を貼り合わせて包装材などに仕上げるラミネート加工が専門だ。 社屋に隣接する工場では、ゆっくりと回る二つのローラーから出た2枚の素材を自動でぴったり接着させる工程が続いていた。できたシートは、住宅の鉄骨と外壁の間に入れられ、緩衝材の役目を果たす。 円戸が考案したこの製法は、大幅な自動化で人件費を抑えられるのが特徴で、特許もとった。製品は全て大手住宅メーカーが買い上げる。「この製品は営業する必要がないんです」。需要は増加傾向という。 そんなアイデアと技術力で会社を引っ張ってきた円戸だが、悩み