「イ゜」「リ゜」。沖縄県の多良間島(多良間村)を歩くと、そんな見慣れない文字を使った看板が目に入る。誤植ではない。島の方言独特の発音を書き表したものだ。沖縄の方言には、標準語には存在しない発音があり、どんな文字を当てはめるのか、ルールが決まっていない状態だ。方言文化を後世に伝えていくため、書き方を統一しようとする試みも始まっている。 「ンメピ ヌカーヌカ イ゜ズィ(もっとゆっくり言って)」 8月下旬、多良間村のコミュニティー施設。島内のサトウキビ農家野原正子さん(73)が、録音機につないだマイクに向かって、多良間方言で話しかけた。沖縄国際大の下地賀代子准教授(言語学)が中心となり、「イ゜ズゥ(魚)」「イリ゜キス(スは小さいス、炒める)」といった単語の発音を記録する作業だ。 下地准教授によると、たとえば…
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