▽浮遊した17年間 オウム真理教事件の取材デスクを担当し始めたころ、教団の教義を調べたことがある。難解だったが、思った以上にストイックで“真面目な”新宗教という感じを受けた。 取材チームで話をすると「大学時代に宗教系の勧誘を受けた」という若手記者が何人かいた。教団幹部でのちに殺される村井秀夫氏に会った記者は、話の内容と彼の人柄に感動したことを隠さなかった。教団は既に坂本弁護士一家事件や松本サリン事件を起こしており、その反社会性に気付かなかった不明は恥じるしかないが、一面で、取材する側も「内なるオウム」と向かい合っていたのだと思う。 オウムには理系出身者が多く、当時から「科学の真理を求める若者がなぜ引かれていったのか」という疑問が出ていた。教義を調べて思ったのだが、入り口は宇宙科学ではないだろうか。ブラックホールに代表される、人智の及ばない「科学の果て」の未知の領域。そこに、彼ら彼女らは宗教