歌や芝居というのは、何かに突き動かされるような強い衝動を持っている人でなければ続かないものなのだろうなと、最近しみじみ感じる。 もし、かつての少年・少女がアイドルに求めた「ごく平凡な普通の女の子や男の子」が本当に芸能界に足を踏み入れてしまったとしたら、それはとても不幸なことなのだろう。 少し可愛いだけの、取り立ててなにもない少女だったアイドル・水谷麻里を今、覚えている人はそうはいないはずだ。 八〇年代のアイドル・ヒットファクトリー、サンミュージックの一押しアイドルとして八六年の春にデビュー。二年目の八七年にかけてベストテンシングルを四枚生み出したけれども認知度はアイドルファン止まり。さてこれからどう展開するかと周囲が呻吟しはじめる三年目に入る直前、八八年春に、さりげなく芸能界を引退した。そのラストシングルがこの「春休み」だ。 作詞はサエキけんぞう、作曲は担当ディレクターの川原伸司の変名、平