いまや記号としてのジョン・ウェインがいかなる存在としてあり続けているかは、誰の目にも明らかだろう。素手をだらりとたらしたままスクリーンに登場することのないこの接触の魔は、たえず掌で何かに触っていなければ居心地が悪く、発射したあとはもとのガン・ベルトへとおさめなくてはならない拳銃よりはコーヒー・カップを握っていることを好み、しかもそれだけでは落ちつけず、手に触れるものがあれば、それを両手にとって胸にかかえこまずにはいられないのだ。 蓮實重彦「映画 誘惑のエクリチュール」 禁煙ファシズムだとかそれをあえて押し付けるだとかいろいろ話題になっていたらしいのだけれども、そのころ私は肺の腫瘍で入院していたりして、すっかり話題に乗り遅れてしまっていた。とはいっても、私の肺のそやつは脚の腫瘍が転位したもので、いかなる種類の喫煙ともまったく関係がなく、肺をやると辛いと言う程度の事はできるが、だから煙草をやめ