戦後72年。かの戦争体験の声が次第に聞けなくなっている今、証言者たちの“孫世代”の中に、声を拾い、研究を深め、表現をする人たちがいる。 戦争から遠く離れて、今なぜ戦争を書くのか――。 インタビューシリーズ第1回は音楽家の寺尾紗穂さん。ピアノ弾き語りや歌手活動の傍らで、戦争体験者の証言を集め「ノンフィクションエッセイ」として作品化し続ける理由を聞いた。 ◆ とりあえず今は動かなきゃ、話を聞いておかなきゃという気持ち ――新刊『あのころのパラオをさがして』は、サイパンなどを取材した『南洋と私』と同じく、寺尾さんが現地に足を運んで「あのころ」を知る人たちに話を聞き歩いています。なぜ、そこまで「南洋」の「あのころ」に惹かれているのですか? 寺尾 知らないことだらけなんですよね、戦中の南洋諸島と日本の関係って。そもそもは中島敦に誘われるようにして、南洋に関心を持ち始めたんです。大学のとき、屋久島に文