田中秀臣著『デフレ不況 日本銀行の大罪』を読むのには随分時間がかかった。文章は読みやすいし、とても良い内容なんだけど、本書が批判している日本銀行の言動にいちいちムカムカしてしまって読み進めるのが難しかった。 本書は経済学の本であると同時に、経済学者がジャーナリスティックな視点から日本銀行を批判した本だ。なので、まず日銀の社会的に問題のある言動が紹介されて、その上で日銀の経済学的なおかしさが解説される。ので、経済学に馴染みのない人でも何がどう問題なのかよく分かると思う。 2009年11月4日に、白川日本銀行総裁は「デフレリスクによって景気が上下動する可能性は少なくなった」(p.28) と述べている。ところが同じ月の30日には「デフレ克服のための最大限の努力を行っていく」(p.30) と正反対のことを変な言い回しで述べた。この変身イリュージョンの理由は、この間に日銀が否定してきたデフレを政府が