あなたが乗っている自動運転車の前方に、突然5人が飛び出してくる場面を想像してほしい。今のスピードのままではブレーキが間に合わず、右側の対向車線には避ける余地がないほど車が続いている。車は乗員の命を守ることを前提に、右に進路を変えることはなさそうだ。左側の歩道には歩いている1人が見える。直進すれば5人にぶつかり、左に回避すれば1人を巻き込むことが予想される。「トロッコ問題」と呼ばれるこの究極の2択を迫られる状況で、自動運転車はどう動くべきか。(時事通信経済部 工藤玲) 【図解】自動運転における「トロッコ問題」の例【時事通信社】 倫理的な議論の意義 トロッコ問題は、当然ながら自動運転だけではなく、人間が自ら運転する場合にも起こり得る。ただ人間の場合、反射的にハンドルを切ったり、パニックで体が固まってしまったりと、冷静な判断が難しいケースが多い。一方の自動運転車は、考え得る限りのケースを想定し、