2018年5月10日のブックマーク (1件)

  • Vol.6 アジールからの出立 | 未来を思い出すために | 連載 | Webマガジン「考える人」 | 新潮社

    高校時代には漠然と小説家か建築家になりたいと夢想していた。言いたいことがうまく口から出てこない、何が出てくるかわからない吃音というエラー発生装置を身のうちに抱えていたわたしには、執筆という言語的構築の理念的な世界はある種の駆け込み寺アジールとして映ったのだろう。リアルタイムな反応を強いる身体的コミュニケーションの世界と異なり、自分のペースで時間をかけて記述するという行為によってはじめて、自分の当の考えが表現できると考えていた節がある。いま思うと、「当の考え」なるものの妥当性も疑わしいものだし、仮に存在するとしてもそれが身体性を欠落したところから生まれるわけはないのに、と我ながらツッコミを入れたくなるが、当時の自分の脆い自己同一性アイデンティティを支える上で大きな救いとなったことは確かだ。 フランスの高校生にとって、高校卒業資格と同時に大学入学資格であるバカロレアに備える勉強が人生で迎え