複眼人 作者:呉 明益発売日: 2021/04/05メディア: 単行本この『複眼人』は、『歩道橋の魔術師』や『自転車泥棒』で知られる台湾作家、呉明益の最新邦訳作にして、代表作と言われている作品である。本作に対する、ル・グインによる「こんな小説は読んだことがない。かつて一度も」というキャッチコピーの時点でおもしろそうだったし、刊行前の評判も凄い! というものばかりで、期待して読み始めたのだけれども、たしかにこれは何がと言いづらいのだが凄かった。 いったい何がこの作品の世界観のベースになっているのかわからないが、独特の神話的世界と台湾の小さな島や、現実に起こり得るもの──”海を漂流するゴミの島”の幻想的な光景がばらばらに語られていき、最終的には何がなんだかわからないうちにまとまって異様な光景と読後感に圧倒されることになる。自然と人間の関わりについての物語であり、幻想的な情景についての物語であり