【東都 三ツ股の図 歌川国芳】 河原で小舟の清掃風景をえがいた浮世絵。 日本橋側より隅田川の向こうに深川をみる。 右手川下に永代橋と,その向こうに佃島,正面左手には隅田川に流れ込む小名木川にかかる万年橋。 隅田川と小名木川との合流地点が三ツ股という地名になった。【絵について】 この絵は不思議な雰囲気を持っている。 ほぼ中心を示すかのようにそり上がった船の舳先を配置し,川の中心のところに,傘をひろげた小舟が進んでいく。 傘で隠されたむこうに誰がいるのだろうかとつい思ってしまう。 水平線を破るように傾けて配されたそれぞれの船の不安定さを押さえるかのように,這いつくばって貝を採る人の姿が置かれている。 煙や空の処理法なども西洋の絵を見る機会がふえた幕末の日本絵画の発達を感じさせる作風である。 煙のたなびく方向につり合わせるかのように鳥が空を飛んでいく。 計算されたバランスのなか