大江氏・村上氏の近似性 文学地図再編の提案2009年2月5日 文芸評論家の加藤典洋氏が最新評論集『文学地図 大江と村上と二十年』(朝日新聞出版)で、大江健三郎氏と村上春樹氏の評価をめぐり〈地勢図の書き換え〉を提案している。87年ごろから〈大江健三郎を評価する評家のほとんどは、村上春樹を否定し、村上春樹を評価する評家のほとんどは、大江健三郎を否定するか、低くしか評価しない〉という評価の二分が生じたとした上で、通説に抗して両者の近似性を明らかにする。 地勢図の分水嶺(ぶんすいれい)となったのは、村上氏が長編『ノルウェイの森』を、大江氏が『懐かしい年への手紙』を発表した87年だったという。前者は大ベストセラーとなり、後者は文学の権威筋から高い評価を受けるという対照的な受容がなされた。さらに先立つ86年に、大江氏が村上氏の〈社会に対して……能動的な姿勢をとらぬ〉スタンスを批判した点がその後の評価の