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  • 『機械の停止 ― アメリカ自然主義小説の運動/時間/知覚』折島正司(松柏社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「潜み笑いとメタ批評」 「英米文学研究にはこんなこともできるのだ!」を示すには格好の一冊である。2000年の出版だが、すでに古典の風格がある。 著者の折島正司は1947年生まれ。60年代後半に学生生活を送り、70年代にはすでに格的な研究活動に入っていた。構造主義以降の英米仏独の批評理論を、いわばガンガン日に紹介した急先鋒のひとりである。筆者も大いに恩恵を受けた。 では、人の手になる研究書ともなればさぞかし理論臭ぷんぷんかというと、全然そんなことはない。おそらくは編集者によるのであろう索引を見ても、項目はすっきりしていて、固有名詞&批評用語バラマキ型の理論派とは一線を画す。 それどころか、何より「イントロダクション」をめくっておどろくのは、書き手の実にうきうきとした口調である。へらへら笑っているわけではないのだが、いちおうまじめそうに語っている底から明らかに昂揚し

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  • 『〈盗作〉の文学史』栗原裕一郎(新曜社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「盗作検証というタブーはこので消滅!?」 ある小説が盗作であると噂されたり、ニュースになることがあります。その多くはどういう決着になったのか報じられないまま、話題そのものが消えていきます。 文学業界のなかでは、盗作問題を徹底的に議論するということを避ける傾向があるのです。表現の自由を標榜している業界なのですが。 「文芸における盗作事件のデータをここまで揃えた書物は過去に例がなく、類書が絶無にちかいことだけは自信を持って断言できる」(栗原) と、著者は控えめに書いていますが、現時点では盗作資料として、第一級にして唯一無二の書籍である、と私が太鼓判を押します。 なにしろ、巻末のデータを含めても492ページの大著。それなのに、たいへん読みやすい。盗作問題に興味がない人でも、文学業界という一般人のうかがい知れない世界を「盗作」という切り口でたのしく探索できるように書かれてい

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  • 東京大学(英米文学)・阿部公彦の書評ブログ : 2007年11月

    阿部公彦 (あべ・まさひこ) 1966年生まれ。東京大学文学卒。ケンブリッジ大学PhD。 現在、東京大学文学部准教授。 著書に 『モダンの近似値』 (松柏社)、『即興文学のつくり方』 (松柏社)、『英詩のわかり方』 (研究社)、『しみじみ読むイギリス・アイルランド文学』 (松柏社)、『フランク・オコナー短編集』(翻訳 岩波書店)、『スローモーション考』 (南雲堂)、『英語文章読』 (研究社)、『小説的思考のススメ ― 「気になる部分」だらけの日文学』(東 京大学出版会)、『文学を<凝視する>』(岩波書店 サントリー学芸賞受賞)、バーナード・マラマッド『魔法の樽 他十二篇』(翻訳 岩波書店)、『詩的思考のめざめ ― 心と言葉にほんとうは起きていること』など。 ホームページはこちら>>> 連載は、「善意と文学 ― 語りの〝丁寧〟をめぐって」 (「Web英語青年」)など。 英米詩を中心に研究

    pygmalion313
    pygmalion313 2008/12/29
    「私小説というものは語り手の「私」が出しゃばって、他者の介入を許さないような、いわば「ひとりカラオケ」の様相を呈することが多い」「逆に言うと(中略)ひとつに統一され得ない声の持ち主にとっては格好の舞台
  • 『白暗淵』古井由吉(講談社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「古井由吉を読んでみよう」 古井由吉と言えば、かつての文学的青年にとっては神様のような存在であった。「杳子」、「隠」、「円陣を組む女たち」といった初期の傑作短篇にしてすでに、一行々々筆写しながら嘗めるように読みたくなるほどの香しさと、力強いリズムと、知的鋭敏さと、さらには物語的な誘惑感とに満ちていた。日語散文のひとつの究極がそこにはあった。 筆者も二十代には、「古井由吉の小説なら、すべて読んでる」と宣言できる時期があった。(瞬間的に、だが) 筆者がはじめて書いた、今では恥ずかしくて読み直すこともできない批評めいた作文も、古井作品を何とか組み伏せようとする努力の跡だった。 しかし、今の文学的青年にとっては、どうやら古井氏の作品は「じじむさい」らしい。何と嘆かわしいことか・・・。「文学」の概念が決定的に変わってしまったのだ。 古井氏が神様だった時代。 それは散文で書く

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    pygmalion313
    pygmalion313 2008/12/29
    古井由吉の狂気。「研ぎ澄まされた「知」であり「智」。そこには老いや滅びの匂いがつきまとい、にもかかわらず、どこかに知恵が芽生えてもいる」狂気。
  • 『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』水村 美苗(筑摩書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「翻訳を切り口に国語の成立をたどる」 東京育ちで、両親も、その親も東京の人で田舎というものを持ったことのない私には、方言で育った人が標準語をしゃべるときの違和感は実感としてわからない。でも英語を話しているときは、それに似たものを思いっきり味わう。 英語は何事もはっきり言い切ることを求める言語で、曖昧さをゆるさない。そう思わない部分が少しあったとしても、「そう思います」と答えることで相手とのコミュニケーションがころがっていく。言い切った直後は日語で思い惑っていた自分を裏切ったような後ろめたさを感じるが、何度かそういう場面を繰り返すうちに、英語で話している人格が調子づいてきて、しれっと言い切れるようになる。ある言語を使うことは、その言葉がもっている論理や感情や感覚に入っていくことなのだ。 ビジネスが目的なら、割り切れる言葉で言うほうが商談がスムーズになるだろう。学問の世

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  • 『1冊でわかる文学理論』 ジョナサン・カラー (岩波書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 入門書として有名なオックスフォード大学出版局の Very Short Introductionsが岩波書店から「1冊でわかる」シリーズとして邦訳されている。 フランス産の文庫クセジュは良くも悪くも百科全書の伝統に棹さしており、とっつきにくい面があるが、こちらは英国産だけに読み物として気軽に読める。もちろん、気軽といっても、内容は格的である。訳文は読みやすいものもあれば読みにくいものもあるが、わたしが読んだ範囲では文庫クセジュの日版よりは概して読みやすいという印象を受けた。訳者もしくは斯界の第一人者による解説と文献案内がつくが、どれも中味が濃い。 好企画だと思うが、「1冊でわかる」という物欲しげな題名だけはいただけない。原著は Very Short Introduction だから、あくまで基礎づくりであり、その先があるのだ。「1冊でわかる」ではなく、「超短入門」と

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  • 『ボン書店の幻 モダニズム出版社の光と影』内堀弘(筑摩書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「物語のおわり」 『ボン書店の幻』が文庫に! 早速、パソコンとの山をむこうへ押しやり、ひといきに読み、呆然となる。白地社版を読んだときもおなじだった。二五〇頁ほどのボリュームのを読んだという気がまったくしないのだ。著者に導かれ、レスプリ・ヌウボオの風に吹かれ、きらめくような書物たちのあいだをくぐり抜け、気がつけば「彼」は消えてしまっていた。まるで一瞬のできごとのようなこの読後感が、「彼」――ボン書店・鳥羽茂の印象とかさなる。 一九三〇年代はじめ、「モダニズムの時代」も後半にさしかかった頃にあらわれた出版社・ボン書店は新しい詩への夢とすぐれた造感覚でもって、当時の若きモダニズム詩人たちの詩集やシュルレアリスム文献を世に送りだした。 そのはじめての出版は昭和七年の夏、竹中郁『一匙の雲』と北園克衛『若いコロニイ』である。「生キタ詩人叢書」というシリーズとしてだされたこ

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  • 『徒然王子』島田雅彦(朝日新聞出版社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    pygmalion313
    pygmalion313 2008/11/20
    「どもることで誰かに救われようとするような「少年語り」とも違うし、気まぐれで、くせのある「悪女の語り」とも違う。むしろ「父の語り」とでも言うべきか」
  • 『この国の経済常識はウソばかり』トラスト立木(洋泉社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「現実の直視するために、いったん経済常識を捨てて、書を読むべし」 アメリカ発の金融危機がすさまじいスピードで拡大しています。 「金融危機が加速している」と書いてもなんのことやら分かりません。 「アメリカ発の金融危機の影響でアイスランド経済が破綻した」 これでもぴんと来ません。なんのこっちゃ、です。 「アメリカ発の金融危機の影響で、アイスランドの主要な銀行が機能停止になり、預金を引き出すことができなくなった。国民は困っている」 ここまで書いてやっと「たいへんなことが起きた!」と理解できます。 このように、私は経済オンチ、です。 しかし、私は経済オンチなのでしょうか? 字面だけでは日経済新聞を読む力はありますし、ニュース番組も理解できます。ところが、いま、日経済に進行している経済の変化ははげしい。しかも、わかりにくいのです。 そのわかりにくい経済を、明快に解き明かす

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  • 『乱視読者の英米短篇講義』若島正(研究社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「明晰な情事」 大学生にお薦めの批評入門第二弾。文学とのお付き合いの方法がわからないという人には、是非手にとってもらいたい一冊である。いわば恋愛指南の書。 著者はこの何十年、文学という異性とさまざまな形で付き合ってきた。声かけ(ナンパ)や、十年越しの片思いや、別れや、喧嘩や、場合によって悲恋や、あるいは思わずこちらが赤面するほどのディーーーーップな秘め事もあった。いやあ、先生、お盛んですな、と思わず言いたくなる。しかし、そんなに情熱的で経験豊かなのに、まるで何事もなかったかのように淡々と、明晰に語ってみせるところが何よりすごい。ほんとうの淫乱とはこういうものかと思う。 著者の若島正は、英文学界では知らない人はいないほどの学者だが、果たして一般にはどうか。渋谷のセンター街で道行く女子高生に「若島正って誰?」と聞いても、ちゃんとした答えを返してくるのはせいぜい10人中1~

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  • 『われらが歌う時』上下巻 リチャード・パワーズ著 高吉一郎訳(新潮社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「もうひとつの歴史を保存する図書館のような小説」 今年の7月にエミリー・ウングワレーというオーストラリアのアボリジニーズの女性画家の展覧会を見た。80歳に手が届くころになってはじめてキャンバスにむかい、86歳で亡くなるまでに3000点を超える絵画作品を描いた人である。すさまじい創作熱だが、驚いたのはそれだけではなく、彼女の描くものが、抽象絵画史がたどってきた色や形や偶然や象徴性などのテーマを一気に駆け抜けていたことだった。西洋美術史の知識はなにひとつないまま、それを成し遂げたことに、大きな衝撃を受けた。 「公の歴史」のほかに「もうひとつの歴史」があるのではないかという思いは、こういう事態に直面すると、ますます強くなる。既存の「音楽史」や「美術史」や「文学史」は過去のものを踏み越え、発展することに価値を置いて綴られてきた。そうやって一の軸を通しな

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    pygmalion313
    pygmalion313 2008/10/07
    エミリー・ウングワレーを引合いに出しながら。
  • 『遠きにありてつくるもの』細川周平(みすず書房) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「かつてない方法で移民文化を考察する」 細川周平には『サンバの国に演歌は流れる』と『シネマ屋、ブラジルを行く』というブラジル移民の文化を考察した二冊の著書がある。『サンバの国に演歌は流れる』は移民にとっての歌を、『シネマ屋、ブラジルを行く』は映画を分析したものだが、ごく限られた地域の限られた集団を扱っているにもかかわらず、人と故郷と文化という普遍的なテーマが浮かび上がっていることに瞠目させられた。 このたび出版された『遠きにありてつくるもの』は、移民と言葉・芸能がテーマになっており、前の二冊とともにブラジル三部作を成している。まず最初に考察するのは「思い」「情け」「郷愁」など、ベタついた感触をもつ言葉たちである。学術的領域からはほど遠い、扱いにくい概念から考えを起こしているところに、著者の覚悟が見てとれる。「私は移民の情と涙をなんとか学問で説けないものかともがいている

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    pygmalion313
    pygmalion313 2008/09/17
    「飛び地」「コロニア語は世代を越えて継承される可能性がほとんどない」「ポルトガル語で育つ二世以降の世代はコロニア語を使う必要がない。コロニア語はある時期に絶対的な必然性をもちつつも、消滅にむかう言葉」
  • 『癒しとしての笑い――ピーター・バーガーのユーモア論――』ピーター・L・バーガー(森下伸也訳)(新曜社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「病いを滑稽に語ること」 著者であるピーター・バーガーは、1929年生まれの非常に著名な社会学者です。『日常生活の構成』や『聖なる天蓋』(ともに新曜社)に代表される、個人の意味世界と社会の構造、近代、宗教といった大きなテーマを扱う著書が多数あります。そんな老大家の邦訳書として久しぶりに紹介されたのは、意外にも「滑稽(コミック、“comic”)」を扱うものでした。 ここでいう「滑稽」とは、うれしかったりくすぐったりするのとも異なる、「何かが可笑しい」という表現ないし知覚を指します。十分にユーモア感覚(滑稽を滑稽と受け取れる能力)をもった聞き手(あるいは読み手)に恵まれれば、笑いによって滑稽は達成されることになります。 滑稽が持つ認識上の貢献とは何なのか。このを通じてのバーガーの答えをまとめると、私たちが疑いを抱かない現実に対して、それ以外のやり方では閉じ込められたまま

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    pygmalion313
    pygmalion313 2008/09/11
    「滑稽が持つ認識上の貢献」とは「別の現実を知覚させ、相対化する」こと。逃避、滑稽でない重い現実がのしかかってくる、その力関係を飛び越える・逆転させるには有無を言わせぬ「神」の存在を共有している必要。
  • 大阪市立大学大学院・早瀬晋三の書評ブログ : 『疑似科学入門』池内了(岩波書店)

    →紀伊國屋書店で購入 わたしたちは、科学とどうつきあっていけばいいのか。書を読んで、あらためて自問した。その答えは、わからなかった。 科学的説明を聞いて合理的に理解できて安心する反面、わたしたちは非合理的なことで生活の潤いを得ている。たとえば、サプリメントを飲んで安心しながら、実際の生活では栄養や健康に無頓着に「おいしい」事をして楽しむことがある。「健康にいい」といわれる品に飛びつくのも悪くない。流行というものは、合理的に考えるとつまらないものになってしまう。理屈抜きに流行を楽しむのも、いいじゃないか。しかし、問題は、それを悪用する人たちがいることだ。また、問題が複雑になって、単純に容認することができない事態が生じている。答えは簡単である。前者については、だまされないようにすればいい。後者については、充分な知識をもって対処すればいい。だが、現実には、そう簡単にはいかない。 まずは、い

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  • 『男の隠れ家を持ってみた』北尾トロ(新潮社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「ちいさな変化の大切さに気づく時」 結婚してから、既婚者の手によるほのぼのしたエッセイが気にかかるようになりました。大きな心境の変化です。独身のときは、同じように独身生活をしている人の書いたものにリアリティを感じていていて、その嗜好はずっと変わらない、と思っていたのですから人間変われば変わるモノですね。 というわけで、今回は生活者の真実に迫る書籍を選んでみました。 書『男の隠れ家を持ってみた』は、自動車(ワンボックスカー)のなかに「隠れ家」をつくる,という、今私が取り組んでいる企画のために手に取りました。仕事のネタとして買い求めたのです。 読んでみて、これは「中高年男性の生き方再検討ノンフィクション」の秀作である、と思いました。 著者の北尾トロさんは、東京都杉並区の西荻在住のフリーライター。結婚して2歳の娘さんがいます。執筆時は47歳。子どもを持った年齢が40代後半

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    pygmalion313
    pygmalion313 2008/09/11
    「独身の酔いどれオヤジに北尾さんがいわれた言葉がふるっています」
  • 『ルポ"正社員"の若者たち』小林美希(岩波書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「若い正社員を使い捨てにする日企業に未来はあるのか」 「正社員になると生活が安定する」という「常識」があります。 格差社会の議論が広がるにつれて、その常識が崩れつつある、と言われています。 しかし、当はどうなっているのでしょうか? とくに、就職氷河期と言われたときに社会に出た若者たちはどういう会社でどういう働き方を強いられているのか? 意外と他人の働く現場のことは知らないのが普通でしょう。自分の会社の給与体系についても知らない社員がいても不思議ではないはず。日人は、労働時間と給与の関係をおおっぴらに語ること、訊くことにためらいがあります。 私たちは、「就職氷河期」「ワーキングプア」という言葉を知ってはいますが、その現実をあまりにも知らないということを、書を読んで気づくことでしょう。 冒頭に、「就職氷河期」を物語る数字が出てきます。 「80年代から一定して70%

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    pygmalion313
    pygmalion313 2008/09/11
    「大学卒業者で正社員として働ける人は50%以下」「(劣悪な労働環境で)同期入社が次々と退社していくなかでやる気のある社員が孤立」「派遣社員の女性が妊娠すると、派遣契約を打ち切る会社が少なからずある」
  • 『苦海浄土 わが水俣病』石牟礼道子(講談社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「誰が書いてもいい話」 よく知られた事件についての、たいへん有名な作品である。刊行は1969年だから、ほぼ40年前。 意外とよく知られていないのは、水俣病にかかわる裁判が、2008年の今なお係争中だということである。そこで、たとえば、その話を聞いた筆者のような者が、「へえ、そうなんだ」と思ったとする。たまたま九州に行く用事がある。せっかく初の九州行きだから、福岡だけでは何だし、せめて熊まで行ってみよう、などと思ったりする。熊の城を見物し、時間があって天気が良かったら阿蘇山の方まで行ってみようかと地図を広げると、熊の向こうはもう鹿児島である。九州の中でも異世界であった薩摩の歴史に思いがおよぶ。気分はたかまってくる。 そこで、ふと海沿いの「水俣」という地名に気づく。そうか、こんなところにあるのか、と思う。行ってみようか、と考える。でも、熊県の最南端、鹿児島との境に

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  • 『漱石の思い出』夏目鏡子述・松岡譲筆録(文春文庫) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「悪伝説」 漱石の私生活を扱うはいつも人気が高い。その多くがタネにしているのが書である。語り手は未亡人の夏目鏡子。娘婿の松岡譲による筆録なのだが、鏡子の落語みたいな語り口が実に雄弁で、ほとんど芸の域に達している。 鏡子夫人は悪伝説で有名だ。そもそも「悪」の定義が何なのか気になるところだが、書を読んでいくと、ああ、そうか、と腑に落ちる。たとえば悪は、朝、起きられない。朝になると、頭が痛い。 私は昔から朝寝坊で、夜はいくらおそくてもいいのですが、朝早く起こされると、どうも頭が痛くて一日じゅうぼおっとしているという困った質でした。新婚早々ではあるし、夫は早く起きてきまった時刻に学校へ行くのですから、なんとか努力して早起きしようとつとめるのですが、なにしろ小さい時からの習慣か体質かで、それが並はずれてつらいのです。(中略)時々朝の御飯もたべさせないで学校へ出し

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  • 慶應義塾大学(アメリカ文学)・大串尚代の書評ブログ:『メモリー・キーパーの娘』キム・エドワーズ(NHK出版)

    →紀伊國屋書店で購入 「見逃した風景をとどめるために」 数年前、アメリカ・カリフォルニア州に住む友人から子供が生まれたという知らせを受けた。そしてその愛くるしい男の子が、ダウン症であるということも。その知らせをうけたわたしは、無事に彼女の出産が終わったことを喜びながらも、どのような言葉をかければよいのか、正直なところ戸惑いを感じていた。ただなんとなく直感的に、「ああ、この子は親を選んできたんだな」と思ったことを憶えている。たしか彼女にもそう伝えたはずだ。 しばらくして、その友人からある印象的なエッセイが掲載されているURLが送られてきた。「オランダへようこそ」というタイトルのこの短い文章は、障害をもった子供を育てることについて尋ねられることが多かったエミリー・パール・キングスレーという女性が、ひとつの解答として書いたものだった。 赤ちゃんができるということは、休暇に行く最高に楽しい旅行を計

    慶應義塾大学(アメリカ文学)・大串尚代の書評ブログ:『メモリー・キーパーの娘』キム・エドワーズ(NHK出版)
  • 『藤田晴子音楽評論選 ピアノとピアノ音楽』藤田晴子(音楽之友社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG