21世紀を17年余も経た今もなお、「がんが食べものだけで治る」ことを主張するテキストは枚挙に遑(いとま)がない。がんに打ち克ったと自称する者や現役医師まで。「がん患者」のために書かれたはずの本が、その命を奪うことになるという皮肉な現実が横たわっているのである。 *** 牛肉はダメだが牛乳はよい。いや牛乳はNG、でも乳製品はよい。糖分はがんの餌だから絶対ダメ。だけどたくさんの果物摂取は必須。低体温はがんに良くないが、体が冷えても野菜ジュースは大量に飲むべし。野菜に含まれるβカロチン過剰摂取は発がんリスクあるけどね。塩は厳禁、岩塩はOK。昔の日本食、ことに縄文時代の食事は良かった……なんのこっちゃ。 がん患者さんの心理バイアスにつけ込む不誠実さ。その代表のひとつが「がん食事療法」です。それを記した書籍の中で最初に取り上げるのは『がんが自然に治る生き方』(ケリー・ターナー/プレジデント社)。「ニ