『ウォーリアー』は、殿堂入りしている2010年代アメリカ映画の名作だ。大手データサイト「IMDb」では歴代200位に入るハイスコアを維持している。リバイバル上映(2024年10月11日〜17日)への推薦コメントで書いたように、総合格闘技をリアルに描いた「男泣き」映画として有名だが、米国試写でもっとも好評だったオーディエンスは女性層という珍しい立ち位置を持っている。 おまけに「完璧な映画」と評される類とも言えず、ご都合主義的な展開に乗れない人は乗れなかったりする。なぜ圧倒的な支持を得ているのかというと、刺さる人にとっては、魂を揺さぶるなにかが宿っているからだ。監督の信仰を再燃させた亡き友人に捧げられた『ウォーリアー』には、キリスト教倫理を現代アメリカに適応させた宗教映画の面がある。霊的な製作現場だったと語られるだけあり、文学的モチーフから音楽演出に至るまで、奇跡的なシンフォニーが奏でられてい