裁判員が「社会のセーフティネットがあれば違った人生を送っていたはずだ」と語り、現場の捜査員が彼の生い立ちを知り「彼も被害者」と匿名でコメントを寄せる異例の事態…。高齢者2人を殺害したにもかかわらず、「前橋高齢者強盗殺人事件」犯人男(当時26歳)に同情が集まったのはなぜか? 事件後の加害者や、その家族を追った高木瑞穂氏と、YouTubeを中心に活躍するドキュメンタリー班「日影のこえ」による新刊『事件の涙 犯罪加害者・被害者遺族の声なき声を拾い集めて』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む) 土屋和也。生活保護を受けていた20代前半、就職すべく履歴書に貼った写真(写真:筆者提供) ◆◆◆ 殺人犯に同情の眼差しが向けられる裁判 和也の存在を初めて知ったのは、2014年11月と12月、前橋市内で起きた2件の強盗殺人事件の容疑者として和也が逮捕されたことを報じる、新聞の片