自己免疫性脳炎は、脳に特異的な免疫応答によって生じる脳炎の一型であり、通常、neuronあるいはgliaの細胞表面抗原に対する自己抗体を認めます。抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎は、2007年に、ペンシルバニア大学のDalmau教授らによって提唱された「卵巣奇形腫関連傍腫瘍性脳炎」であり、グルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体を構成しているNR1 subunitの細胞外抗原(GluN1)に対する抗体(抗GluN1抗体)を介して発症すると考えられている自己免疫性脳炎です。若年女性に好発し、感冒症状後に急速に統合失調症様の精神症状が出現し、痙攣、中枢性低換気、遷延性意識障害、口・顔面に好発する奇妙な異常運動を特徴とする脳炎です。一方、本邦では1997年に日本大学神経内科学の亀井聡教授が若年女性に好発する重篤な臨床経過をたどる急性非ヘルペス性脳炎をacute