あらすじパリで開催された肝炎ウィルス国際会議に出席した佐伯は、講演を終えた後、一人の老人に声をかけられた。 アメリカの陸軍微生物研究所のべルナールと名乗るこの老人は、かつて佐伯が机を並べて研究をしていた友人、黒田の上司であり、友人だったのだと言う。 そしてアメリカで事故死したと聞いていた黒田は、実はフランスで自殺していたことを佐伯に告げる。 黒田の墓の場所を伝え、その墓の世話をしている女性にこの封筒を渡してくれないか、とベルナールに頼まれ、二十数年前の黒田とのことを思いながら、佐伯は彼の足取りをたどる。 異国の地で命を落とした友人は何を思い生きてきたのか昭和二十七年。 北東大学細菌学教室で大学院生の佐伯と専修生の黒田は机を並べ、免疫に関する研究を行なっていました。 金がなく皮肉屋で、人一倍感性の強い心を持つ黒田の、ふとしたときに見せる優しさに佐伯は好感を持っていました。 やがて黒田の研究成