新型コロナ禍では社会の有り様が大きく変容せざるを得ない状況になっている。感染症の拡大を防ぐためには、個人の自由が制限され、集団として統制される必要があるからだ。しかし、それはともすれば大きな危険を伴う。 しかし、実は「全体主義」の空気はコロナ以前から漂っていたーー。 東京大学東洋文化研究所教授の中島隆博氏は新刊『全体主義の克服』(集英社新書)で、現代ドイツを代表する哲学者マルクス・ガブリエルさんと「21世紀の全体主義」について議論をしたという。 東西哲学界の雄が見る「21世紀の全体主義」とは何なのか? そして我々はそれにどう抗えばいいのだろうか? 中島氏に聞いた。 ――全体主義と聞くと、20世紀のナチス・ドイツや大日本帝国のことが思い浮かんできますが、ただ21世紀の世界にはナチスのような体制はほとんど見られません。新型コロナウイルスに対応するため、国家による統制は強まっていても、それはナチ