南海電鉄の新今宮駅のホームに降り立った瞬間から感じる、古いコメを煮詰めたようなすえた匂いと、汗やタバコの臭気が混じり合った独特の空気。駅から堺筋を南に歩くとほどなく見つかる「覚醒剤の売人は、西成から出ていけ!」と垂れ幕が出たビル──。大阪市の南西部に位置する西成区は、ひときわ個性的な存在感を持つ街だ。 近年は滞在費の安さから外国人バックパッカーが多く立ち入るようになり、表通りのドヤ(日雇い労働者向けの安宿)は多言語対応とWi-Fi完備が売りの現代的なホステルに変わりつつあるが、区内のあいりん地区を中心に、いまなお日雇い労働者や生活困窮者の姿は多い。