推理作家、横溝正史(1902~1981)が岡山県倉敷市に疎開中、名探偵金田一耕助シリーズの第2作として書いた「獄門島」。笠岡市沖の六島(むしま)がモデルとされる架空の島が舞台だが、実は横溝は狭い空間が苦手な乗り物恐怖症だった。疎開中も倉敷の中心部や岡山市に数回出かけただけ。「獄門島」は島を訪れることなく、人から聞いた話をもとに書き上げたという。 「備中笠岡から南へ七里、瀬戸内海のほぼなかほど、そこはちょうど岡山県と広島県と香川県の、三つの県の境にあたっているが、そこに周囲二里ばかりの小島があり、その名を獄門島とよぶ」 「獄門島」は、こんな書き出しで始まる。