長崎県平戸は、世界遺産の構成要素を持つ他の地域とは違うキリシタンの歴史が刻まれてきた。ひと言で「潜伏キリシタン」といっても、「平戸・生月」系と「外海・五島・長崎」系があり、南島原や天草ではまた異なる歴史が刻まれてきたとされる。さらにはそれぞれが独自にその地の風習や文化と融合し、地域に根差した信仰のかたちを作り上げてきた。本書では、その中で平戸にスポットを当てるが、著者の専門は人文地理学。地理学の観点から平戸の宗教的景観を読み解いていく。 「本書では、神道や仏教の諸宗派はもちろんのこと、かつての潜伏キリシタン、カトリック教会、修験道の山伏、琵琶法師、祈祷系の巫女(シャーマン)、あるいは複数の新興宗教など、実に魅力的な多数の宗教的要素が混在する長崎県平戸地域を対象として、一方では地域の内外を広く俯瞰しながら、他方では個々の集落や人々に深く接近したい。このような一見すると極めて混沌とした、外部者