インテリ黒人作家が「リベラル白人が喜ぶ軽薄な貧困黒人小説」の真似ごとを書いてみたらそのまま大ヒットしてしまう……Amazon Prime配信映画『アメリカン・フィクション』は、あらすじから想像されるより皮肉な風刺ではない。むしろビタースイートに「バズる企画じゃないと通らない」クリエイティブ職のつらい現実をとらえている。 「ポリコレ」嫌いの主人公 ステレオタイプをネタにしたこの映画はステレオタイプではじまる。黒人教員が授業で差別用語を使っていったことで白人学生にクレームを入れられて休職に追い込まれる……これはイーライ・ロス『ヒューマン・ステイン』と同じ導入だ。「ナイーブで世間知らずなリベラル白人大学生」というのは叩かれ材料になりがちで、最近も『TAR/ター』や『ホワイト・ロータス』に登場している。「偉大なる芸術を侵すポリコレ風潮」に嫌気がさしているアートファンから快哉を呼ぶお決まりの戯画なの