球史に残る金字塔を打ち立てても、冷静だった。「感情が溢れることはない」と本人は言う。しかし、表出せずとも稀代のヒットマンの胸中には、誰よりも熱く滾るものがあるのだ。 晴れの瞬間でも大島洋平はわずかに口角を上げただけだった。8月26日、DeNAベイスターズ戦の第2打席、センター前に打球が弾んだ瞬間、スタンドの観衆は立ち上がった。ゲームが止まり、花束を抱えたチームメイトと恩師らが一塁ベース上の主役に歩み寄る。プロ野球の歴史でも限られた者にしか許されない時間に浴しながらも、彼はポーカーフェイスを崩さなかった。 「昔は2000本打った人をすごいなあと思いながら見ていましたが、いざ自分がやると、ああ、やったなという感じで……。それよりも周りの人たちの反応の大きさにびっくりしてしまいました」 オーダーの先端で淡々とヒットを重ね、涙を流すことも、絶叫することもない。良くも悪くもひたすら平熱を保つ男――そ