『自由論序説』(未発表稿)の第二部「自由の政治哲学」の草稿を投稿する。演劇論の部分は、すでにここで発表したものであるが、一応まとめて掲載しておく。諸氏の批判を参考にして、出版の際には改善したい。 Ⅱ自由の政治哲学 社会契約説の意義 自由の形を求めてその具体的在り方を論じようとするならば、その政治的形態を第一に論じなければならない。政治権力こそは、人間が自由のために不可欠なものとして創り出しながら、実際にはしばしば隷属へとつなぎとめもしてきた問題的な現象だからである。その中でも、近代政治哲学は社会契約説という形で、政治的自由の一般理論を構築しようとした。それゆえ、自由を論じるうえで、近代社会契約説の吟味は避けて通れない。 近代社会契約説こそは、所与の超越としての自由を政治社会の成立と結びつけることによって、政治哲学を画するものであった。それ以前の政治理論は、その起源を神に求めたり、伝統に求め