仏教絵画史上の傑作と判明した法明院本「五部心観」について説明する(右から)福家俊彦長吏、安嶋紀昭教授、高間由香里准教授=大津市の三井寺 大津市の三井寺(園城寺)が所蔵する国宝密教図像「五部心観」の幕末の写本と考えられていた法明院本(同寺所蔵)の巻物が、西暦1000年前後(平安時代中期)に制作されたものだったことが広島大学の安嶋紀昭教授(文化財学)らの調査で分かった。藤原道長が娘、彰子の入内(999年)の際、皇子誕生を祈って宮廷絵師に描かせたと考えられるという。巻物が国宝級だったことが確認されたことになるが、その発見の経緯は偶然の産物だった。 法明院本に描かれた仏像画を安嶋教授らが分析。絵師の筆運びを観察する線描調査によって、1000年前後の作で「仏教絵画史上の和様の極致」と鑑定された。 五部心観の原本は、平安時代前期の入唐僧で三井寺を中興した円珍が、855年に唐から持ち帰った門外不出の秘宝