犬に金玉を噛まれるも驚異の生命力で生還 勝海舟は、1823年、文政6年、江戸本所亀沢町で旗本勝小吉(かつこきち)の長男として生まれます。幼名は麟太郎(りんたろう)、勝家は徳川家康が天下を獲る前から仕えた譜代の旗本ですが、禄高は41石に過ぎず、役職にもつけない貧乏ぶりで父である小吉は、商人の用心棒や刀剣の目利きなど、下町の顔役として細々と生計を立てていました。 海舟は少年期から聡明で、小吉は非常な期待をかけていましたが、9歳の頃に道で野犬に金玉を噛まれ、生死の境を彷徨う経験をしました。この時、父の小吉は献身的に海舟を看病し、その甲斐もあり70日程では回復しています。海舟は幼少期の体験がトラウマになり犬は大小関係なく生涯嫌いでした。 一時期の海舟は剣術に打ち込み、島田虎之助(しまだとらのすけ)に師事して腕は直心影流(じきしんかげりゅう)の免許皆伝で同時に禅に傾倒して心胆を練り上げています。ただ