中学時代に舞台と出会い、劇団文学座の看板俳優だった角野卓造(76)は、69歳のときに演劇人生にピリオドを打った。脳の血流が悪くなる「一過性脳虚血発作」という病が理由だ。芸能界に入る原点との決別の際、何を思ったのか。そこには生きてきた歩みがそうさせる独特の死生観も影響していた。現在、規則正しい生活や検診で健康をキープ。「決して役者をやめたわけではないんですよ」と舞台とは違う世界で演者としての闘志を燃やしている。(内野 小百美) 角野といえば、ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」(TBS系)で演じた中華料理店のマスター、小島勇。最初に異変を感じたのは、同作の舞台版を上演中(2006年1月、明治座)でのことだった。 当時57歳。「それほど重要な箇所でなく、暗転前のワンセンテンス。赤木(春恵)のママに『母ちゃん、〇〇だよ』というようなセリフ。ポンと出てこなかったんですよ、あれ?と思ってね」。数分後には違和