世間が大騒ぎするような重大な殺人事件が起こると、必ず「精神鑑定」という難題が浮上する。 鑑定の結果、加害者に精神障害が認められると、刑法39条の規定で無罪か刑の軽減になる。 厳罰派は、被害者感情を持ち出して、「犯罪をした精神障害者にも処罰を与えるべきだ」と主張する。 一方、精神科医や人権派弁護士らは「精神障害者に必要なのは、処罰ではなく治療だ」と主張する。 議論は一向に進まず平行線のままだが、刑法39条をめぐるこの混乱をどう考えるべきだろうか。 前編『「遺族は到底納得できない」...なぜ5人殺傷で罪に問われないのか、意味不明な行為ほど罰が軽くなる「刑法39条の大矛盾」』から続く。 起訴前鑑定で不起訴になるケースが9割 犯罪白書によると、2022年における刑法犯の検挙人員は16万9409人。そのうち精神障害者等(精神障害者1039人+精神障害の疑いのある者305人)は1344人。刑法犯の検挙