所有と経営の分離を前提にした企業統治においては、株主がもつ最終的な経営権は、専門の経営陣に委嘱されている。故に、経営陣としては、株主の利益を守ること、株主に適正な利潤を還元することが経営課題になる。企業統治論が、どうしても株主を頂点とした構図になりやすいのは、当然である。 しかし、大切なことは、ステイクホルダー全体における公正公平なる利害調整である。その公正公平性の確保に、本来の企業統治論の中核があるのである。問題の鍵は、ステイクホルダー相互の序列にある。 ステイクホルダーを単純化して、顧客、協力企業、従業員、銀行、国税庁、株主と並べて見ると、これが、弱い組と強い組の二つに分けられるのがわかる。顧客、協力企業、従業員の弱い組と、銀行、国税庁、株主の強い組である。強い組のうち、強すぎる国税庁は特殊なので抜こう。残った銀行(債権者)と株主は、企業の貸借対照表の右側、すなわち企業の資本構成を代表