「肝臓癌の既往がある、とのことですが、いつ頃のことですか」 「10年ほど前にたまたま見つかって。手術して治りました。その後特に再発はありません」 「ご職業は?」 「今は無職です。以前はしがない肉体労働ですよ」 「もう少し詳しく。どういったところにお勤めでしたか」 「プラスチックのパイプなんかを作る工場で作業員をしていました」 「お酒は飲まれますか」 「それなりに。毎日の晩酌を。でもそんなにたくさん飲むわけではありません。量で言えば、ビールを2缶ぐらいかな」 「B型肝炎やC型肝炎だと言われたことは?」 「それはありません」 肝臓というのはデトックス器官で、体に入ったよからぬものを解毒してくれる非常にありがたい臓器だ。 そのデトックス器官自体に癌ができてしまう、というのは、これは余程のことだ。 アルコールの多飲によって脂肪肝になり、肝硬変に進展し、ついには肝臓癌を発症する、という流れも確かにあ