アップルのデザインを長年統括してきたジョナサン・アイブ氏や深澤直人氏から敬愛される伝説の工業デザイナー、ディーター・ラムス。彼にフォーカスを当てた長編ドキュメンタリー映画「Rams」(2018)の上映会イベントが、去る2019年11月、アクシスギャラリーで開催された。 普段は人前に出ることを好まない、撮影当時86歳だったラムスから、映画を通して伝わってきたデザインの本質とは? 本イベントは11月1日より開催された「Design Meet-up@AXIS 領域と世代を超えてつながり、『デザイン』を考える1週間」のプログラムのひとつです。 復興期に育まれた静かな情熱 映画は、緑に囲まれたラムスの仕事部屋から始まる。カタ、カタッ、カタカタ。決してスムーズではない、タイプライターを打つ音が映像にかぶさる。真っ赤なオリベッティのヴァレンタインに向かうラムスはブラインドタッチではなく、人差し指でエット